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2014年11月21日

週中コラム ~なぜ気づかなかった!タイマイ養殖への思い~

(今回は賛否両論あるかと思いますが、あくまで私見です。興味のある方はどうぞ)


 読者のみなさん、こんにちは~!!
 いや~。文字書くの、実に1週間ぶりです!(誰かクリスマスプレゼントに時間ちょうだい!)
 これだけ長い間書いてないと、もう手が指が、脳細胞の一つ一つまでもがウズウズして、矢も楯もたまらずじゃ。でございますよ。

 実は最近、書評ライター養成講座なるものに通っています。
 以前イベントはしごに登場した宮城一春さんがメイン講師を務めるこの講座、丁寧に文章の書き方を基本から教えていただけるんです。
 さらに毎回異なるゲストが講師として演壇に立ち、著者が喜ぶ書評とは、人に本を手に取ってもらうための書評とは、等々について語るのですが、三者三様、これがなかなか興味深い。

 「同じこと言ってるけど、やってることは真逆やんか!」

 など、いつものノリで密かに心の中で突っ込みを入れることも。
 講座が終了する頃には、実際に書評を書いて本に掲載することになるそうなので、もし私が書評を書いた場合には是非読んでみてくださいね♪

週中コラム ~なぜ気づかなかった!タイマイ養殖への思い~
クリックで講座の様子へ。毎回講座がある度に更新されていくようです。写らないように後ろに座ってます。


 ・・・と、これだけ言いつつも、実は書評が書きたくて講座に申し込んだんじゃないんですよ。単に文章の書き方を基本から習いたかっただけ、というあまりにレベルの低い動機だったので、毎回ガッツリ書評の講座を受けていると、本当にこの場にいていいのかまだ戸惑いが拭えません。
 でもホラ、きちんとした文章なんかあまり書いたことがないもんですからね・・・やはり基本は押さえておかねばだ。



 さて、前回の記事でも書きましたが、去る先週木~土は長崎に行ってきました。

週中コラム ~なぜ気づかなかった!タイマイ養殖への思い~
世界新三大夜景の長崎市の夜景。モナコ、香港と並んでということだが、なぜそれらに並んで長崎なのか。


 長崎は久方ぶり。
 2年半前のGWに九州一人旅で訪れたんですが、長崎は他県とは全く異なり、異国情緒が溢れていて心が小躍りします。
 「沖縄から行ってるくせに異国情緒とかw」なんて思うかもしれませんが、沖縄で見て取れるのはほとんどが色濃い中国の面影。しかし長崎は、中国とそれ以上に近代西洋の香りが強烈に溢れていて、沖縄とは全然違うんですよね~。

週中コラム ~なぜ気づかなかった!タイマイ養殖への思い~
県内各地には、キリシタンの歴史漂う古めかしい教会が点在し、一度でいいからミサに参加してみたいという強い欲求が刺激されます。寺社仏閣とは違った、敬虔な気持ちになれそう・・・。


 仕事も終わり、さて観光をしようとマップを開いた際、気になった場所がありました。
 それは、長崎市べっ甲工芸館。べっ甲細工の粋を結集した、珠玉の工芸品を展示しているであろう場所です。
 以前ウミガメの話でも少し多めにふれましたが、べっ甲の材料となるタイマイは1993年ワシントン条約で国際移動が禁止されており、国内への供給が絶たれて20年以上が経過しています。
 これが直接の原因か、時代の流れかわかりませんが、べっ甲職人はかつてと比べて激減したと聞いています。


 ともあれ、遠い沖縄は石垣島で養殖が試みられているタイマイの、命の行方とは・・・?
 気になったので、べっ甲工芸館に行ってみました。


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なぜか金魚。白いべっ甲ほど高価。この金魚の価値たるや。


週中コラム ~なぜ気づかなかった!タイマイ養殖への思い~
富士の屏風。色違いのべっ甲を張り合わせての芸術。


週中コラム ~なぜ気づかなかった!タイマイ養殖への思い~
なぜタイマイでエビを作ろうとしたのか。。


 ・・・・。


 なんで、今まで気がつかなかったんだろう。
 いや全くなかったわけじゃないし、心のどこかに小さな疑問があったことは間違いないんですけど、ついに確信に至りました。



 タイマイの養殖は、自分の中で受け入れられない。



 まず、読者の皆さんに問いたいと思います。
 あなたは、象牙についてはどのような意見を持っていますか?又は、フェレットやウサギ等の毛皮(身につけるものに限る)、クロコダイルやダチョウの皮についてはどのような意見を持っていますか?


 私の意見を書きたいと思います。
 まず、ウサギ、クロコダイル、ダチョウについては概ね同意見です。
 これらは毛皮もしくは皮がバッグや財布の日用品や、装飾に使われたりしますね。
 ただ、これらは純粋に皮目的で殺されるわけではありません。
 日本ではあまり出回りませんが、ダチョウやクロコダイルの肉は非常にメジャーな国や地域があることは事実です。沖縄通なら、ダチョウが食べられる場所が北部と石垣島にあることはご存じでしょう。

週中コラム ~なぜ気づかなかった!タイマイ養殖への思い~
北部のダチョウランド。クリックでdee-okinawaのレポ記事に飛びます。


週中コラム ~なぜ気づかなかった!タイマイ養殖への思い~
妹がオーストラリアからのお土産に買ってきたダチョウジャーキーは、御年輩の味がした。


 それと、ウサギについては日本国内でもひっそり消費されています。
 小さな頃、ヒーロー系ソーセージをムシャムシャしならがパッケージの裏面を向け、記載された原材料名に『ウサギ肉』の文字を見つけた時の衝撃は、未だに忘れられません。
 当時、我が家には10羽ほどのウサギを飼っていたので、ウサギは可愛い、愛でるべき生き物でした。それなのに、私がまさに今食べてるソーセージに肉と化したウサギが入っているだなんて・・・!
 真実を目の当たりにした瞬間ひどく嘔吐してしまい、以来大好きだったそのソーセージが食べられなくなってしまいました。
 ヒーロー系ソーセージ、トラウマ。。

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ネットで探すとこんなものが・・・。昔からこんなものあったっけ?東北だけなの??


 というわけで、この3種については食及び装飾に利用されているという理解で私の中では処理しています(真実は分からないけど、今一応ですよ)。


 次に、フェレット等の毛皮(身につけるもの限定)。
 この15年くらいですかね。日本はイマイチ鈍いのですが、先進国(特にアメリカ)での毛皮廃絶の動きはすごいですよね。アメリカ、カリフォルニア州のウェストハリウッドは毛皮商品の販売禁止条例を制定する等、毛皮に対して徹底した態度をとっている自治体もあるほどです。

 毛皮は決して風を通さず保温性も高いため、かつては優れた防寒具として活躍していましたが、科学の進んだ現代社会においては寒さを防ぐための代替品は腐るほどあります。わざわざ生き物から毛皮だけを取る必要性は一切ないと思います。

週中コラム ~なぜ気づかなかった!タイマイ養殖への思い~
もちろん、地域によっては生活に必須の場面だってある。


 必要性は一切ない・・・と言いはしますが、毛皮も人が最低限生きるのに必要な、衣食住の要素の一つ。基本姿勢は反対ですが、用途を考えると100%反対だと言い切ることもできない気がします(99%は反対だけど)。


 毛皮とは少し違うけど、フェレット等一部の動物は治験にも使われてますよね。

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フェレットは古くは狩猟用だったが、穴に入って獲物を食してそのまま眠るという体たらくだったがゆえ、用途は長く治験と毛皮用だった。コンパニオンアニマルの道が開けてよかったね。


 実験動物の廃絶を唱える人もいますが、医薬の発展は彼らの存在なしにはあり得ない以上、あまり文句も言えません。廃絶派の方にはシーシェパードの幹部よろしく、薬や一部医療を一切利用しない生活を送っていただきたいと思います。(シーシェパードの幹部はベジタリアンらしい)


 そして象。
 すでに述べた動物たちは生命に直結する食事か、少なくとも命を守る役割をする衣類として利用される側面がありました。
 しかし、象には一切そういったことはありません。象牙は高価な装飾品、芸術品の材料である以上の何者でもありません。

 象牙を取るためには殺すしかない。これが現実です。

 「象を眠らせて、殺さず象牙だけを切りとってしまえばいいじゃないか」という意見もありそうですが、象牙を効率的に取ろうと思うと顔を切り取る必要があるそうです。それは生きていられない。
 というわけで、完全に奢侈品でしかない象牙については100%反対の姿勢です。トラの毛皮も同じ理由で反対派。

週中コラム ~なぜ気づかなかった!タイマイ養殖への思い~
しかし社会人の祝いに親から送られた印鑑3点セットは象牙だった!!く・・くっそ~~~!!!


 話をタイマイに戻します。
 これまで私の理解の中で、べっ甲は櫛やかんざし、アクセサリー等に使われているものばかりかと思っていました。
 工芸館に入って驚け、そこに展示されているもののほとんどは、そんな甘っちょろいものなんかじゃぁなかったのです。
 冒頭からさらに、もう少し見ていきましょう。


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技術の粋を集めて作られたプラモデルのような帆船。


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宝船


週中コラム ~なぜ気づかなかった!タイマイ養殖への思い~
カメがワシに変身した。


週中コラム ~なぜ気づかなかった!タイマイ養殖への思い~
べっ甲の胴!べっ甲はあまり強度がないから、絶対攻め込まれない自信のある達人にしか着用を許されないのであろう!!


 分かってはいたんですが、ここを見て再確認しました。
 所詮、べっ甲細工ってお金がある人のための贅沢品ですよね。

 肉を食べた後の甲羅を再利用して優れた工芸品を作ることには、素晴らしい意義があると思います。
 しかしそれも今は昔。養殖されたタイマイたちは象牙と同じく、甲羅を剥がされるためだけに殺される運命にあるのです。

 先輩曰く、「1枚1枚丁寧に剥がせば5~6回くらいは繰り返し収穫できるよ」とのことですが、甲羅を剥がされるのって人間で例えるなら爪を剥がされるか、それ以上の苦痛と生きる上での困難さを伴うと思うんです。
 私がタイマイなら、「いっそひと思いに殺してくれ!」と絶叫することでしょう。

週中コラム ~なぜ気づかなかった!タイマイ養殖への思い~
こんな感じ。


 では、タイマイを殺すことを"正当化するために"べっ甲以外の利用価値はあるのか。

 真っ先に思いつくのは食用ですね。
 かつてタイマイの最大輸出国であったキューバは、肉を食べるためにタイマイを捕り、ゴミとなるべっ甲を輸出することで外貨獲得の手段としていました(まぁこれも半々の話で、べっ甲を取るためだけに捕まったタイマイも多かったと推測します)。

 日本で食べられているウミガメは、アオウミガメとアカウミガメ。
 アオは小笠原と沖縄で、アカは高知で。
 話によると、小笠原のアオウミガメメニューはバリエーションに富んでおり、基本のスープ、鍋の具材から、刺身、カレー等にもなっているとのこと。

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初ガツオくらいのノリなんだ!

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手前はカメの握りだと。


 高知の人はアカしか食べないそうですが、理由は簡単で、高知の周辺にいるのがアカウミガメだからなんですよね。アカは雑食だから臭いそうです。

 つまり、日本でタイマイは食べられていない。
 昔の漁師は言います、「だって美味しくないからよ!」
 他に美味しいものがわんさかある現代日本において、タイマイの食用転嫁は富士山のごとき高い高いハードルと言えるでしょう。

 他に何か可能性があるでしょうか。
 製薬会社が心血注いで研究・開発を行えば、タイマイを材料にした画期的な薬ができるかもしれません。

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亀の腹側の甲羅で作られる亀苓膏(キレイコウ)。薬膳とデザートの間を彷徨うハンパもの。


 スーホの白い馬よろしく、馬頭琴のように甲羅以外の全身を使って楽器でも作ってみる?
 
週中コラム ~なぜ気づかなかった!タイマイ養殖への思い~
南米には亀を使ったマラカスのような楽器があるらしいが、持ち手が呪いの干首みたいでイヤだ。


 私の小さな脳みそで思いつくだけ考えてみたんですが、どれも市場に乗る気がしません。
 べっ甲職人の親玉であるべっ甲協会だって間違いなくこのテの批判をかわしたい気持ちがあると思うので、もしいいアイディアが出たら、べっ甲協会がいい値段で買ってくれるかもしれませんね。



 話は変わって、この類の話をする際に必ず出てくるのがべっ甲職人とその技術の問題です。
 日本にはまだ多くのべっ甲職人がいることは事実ですし、中国発祥とはいえ日本のべっ甲技術そのものは世界に誇ってよいレベルだと思います。
 世間的には、国内の在庫であと4年ほどは持ちこたえられるようなことをどこかで耳にした気がするんですが、ストックが切れれば職人は廃業、技術もそこで途絶えてしまいます。

週中コラム ~なぜ気づかなかった!タイマイ養殖への思い~
確かにこの技術には万人が目をみはるであろう。


 これを考慮すると、少し思考が鈍ってしまいそうな気もするのですが・・・それでも私の中では、金持ちのためだけに、殺されるだけの、タイマイ養殖に是非を突き付けたい気持ちが渦巻いてしまっているのです。

週中コラム ~なぜ気づかなかった!タイマイ養殖への思い~
こんなものを見てしまった日には・・・ねぇ?


 何が正しいというわけではありません。こういった話への見解は各人の立場、経験、思考で大きく変わってくるものですからね。
 でも、現実として今の私はこの思いに悩まされています。
 誰か倫理的にタイマイの養殖について私を納得させるだけの材料をもってる方がいたら、どうかご教授ください。
 気になりすぎて長崎から帰って来てから寝つきが悪く、リアルに困ってます。



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この記事へのコメント
タイマイ、難しい問題ですね。養殖してることは知らなかったし、ただ職人技の継承も何となく必要かなぁ?とも思うし・・・、うまくまとまりません。
牧さん、8:32から見ましたよ!お美しい〜
Posted by 庚子(かのえね) at 2014年11月22日 10:30
> 庚子(かのえね)さん
これは本当に難しい問題です。ここで書いているのはあくまで私の気持ちなので・・・これを読んだ方も賛否分かれることでしょう。だから、誰の考えが正しく、間違ってるということがなく・・・やり切れないですね。
>8:32
見ていただいたんですね、ありがとうございました^^ でも言われるとめっちゃ恥ずかしいです(/ω\)
Posted by  牧 at 2014年11月22日 19:38
何気なく「べっ甲 養殖」と検索していてこの記事にたどりつきました。「確かにこの技術には万人が目をみはるであろう」「それでも私の中では、金持ちのためだけに、殺されるだけの、タイマイ養殖に是非を突き付けたい」 という相反する思考 曽祖父からべっ甲に携わってきた家に生まれた人間であるわたくし(現在59歳)の胸の内にもこのいつもこの2つの思いがありました。いのち.美.技術.文化 について矛盾する考えから目を背けることなく直視しながらわたくしのお店のホームページのなかで童話というかたちで綴りはじめました。この記事にお書きになられている言葉を大切なキーワードとして小さな物語のなかで使わせていただければと考えています。貴重なご意見 とても参考になりました。ありがとうございます、
http://kawaguchi-bekkou.sakura.ne.jp/index.html 
Posted by 川口鼈甲店 店主 川口洋正 at 2019年04月16日 10:16
>川口鼈甲店 店主 川口洋正さん
こんにちは、コメントありがとうございます!
正直、業界の方に見つかればブーイングしか浴びないだろうと思っていたので少し驚きでした。その世界で育ち、生きているとはいえ、複雑な思いを抱えていらっしゃることを知ることができたのは、私にとっての幸いです。
べっ甲商品を扱っていらっしゃる方に第三者である私の言葉を使っていただくのは大変恐縮ですが、同時に光栄なことです。ぜひお使いいただければと思います。
ご訪問、誠にありがとうございました!!
Posted by  牧 at 2019年04月16日 21:07
>川口鼈甲店 店主 川口洋正さん
少しHPを拝見いたしました。
お体を大切に、過ごされてくださいね。
Posted by  牧 at 2019年04月16日 21:15
はじめまして。
八重山出身のものです。べっ甲でググって来ました。
べっ甲と亀の関係ほんと知らなくて勉強になりました。
島では亀の剥製がどの家にも飾られていたなーと思い出しました。
動物の命の上に立つ「文化」ってなんなんだろうな、と
象牙しかり京都の祇園祭りの馬しかり、様々なこと多過ぎて
悲しいです。
記事ありがとうございました。
Posted by Masa at 2019年07月23日 12:32
>Masaさん
お返事遅くなって大変申し訳ありません!
コメントいただきありがとうございます。

私も石垣に住んでいたことがあり、漁師の家には必ず剥製があったこと、剥製技術は元々は漁師が大抵もっていたものであることを考えると、生物の命と生活、文化が密接に結びついていたんだなぁと思います。

人により思うところは様々だと思いますので、そのきっかけの一つとなれば幸いです。
Posted by  牧 at 2019年08月12日 13:21
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