誕生から15年が経過した絶滅危惧種、二千円札を県外で使ってみよう ~後編~

2016年02月16日 21:57

 前編のあらすじ。

~今や日銀に吸収されまくってその存在価値と存在感を共に失いつつある二千円札。内地でお会計の際にご披露すれば、ちょっとした反応が見られるのではと大量の二千円札を持って日本を飛び回るが、芳しい反応に巡りあえず焦りが止まらない~
 ・・・そうだよ、タクシードライバーを狙うんだ!!


④鹿児島中央駅前・タクシー内(鹿児島県)



 今回訪れたのは鹿児島県鹿児島市内。
 泊まったホテルの部屋から桜島がドドーンとお目見えする素晴らしいロケーション。しかも朝6時に勇んで大浴場に向かったのですが、ゆるゆると白みゆく景色に影を落とす桜島が、徐々にその雄大な姿を現す様を湯に浸かりながら見るのはたまらない贅沢でした。
 灰は降らせるし、先日は本当に噴火して地元民には大いに迷惑をかけながらも愛されるワケが、なんとなく分かったような気がします。

 用件を済ませ、飛行機の時間ギリギリ間に合う辺りで路面電車に飛び乗ったところ、向かった先が全く違う方向。急いで電車を飛び降り、慌てふためきながら目的のモノを探します。


牧「ヘイ、タクシー!!」


 沖縄とは比較にならないほど捕まえづらいです、鹿児島のタクシー事情。



ターゲットは、70歳近くの男性

 異様に安い沖縄以外では滅多にタクシーに乗りません。出費は痛いがこれは神の与えたもうた機会なのかもしれません。
 ここで使わず、いつ使うんだ二千円札

牧「これでお願いします」





 おじさん、しっかりと二千円札に視線をロックオンしました!
 ワクワクワク・・・・。


おじさん「はい、千円と280円のお釣りね。ありがとう。」

牧「はぁ~~~・・・


 写真見ていただければ分かると思うんですが、このやり取りは全て動画に記録していました。そしておじさんの返しを受けた時の私の反応ってば・・・もう、残念極まりないと言わんばかりのタメ息です。
 おじさんは何も悪くないのですが、「比較的余裕のありそうなタクシーという密室空間であればいい反応がくるに違いない」という仮定が覆された無念と、本来なら使わなくてよかったはずのタクシーに乗って余計なお金を支払ってしまったことへの盛大なガッカリ。

 おじさんは、何も悪くありません。
 悪いのは、くだらない考えを巡らせている私です。。


 これはこれとして、次に望みをつなぎましょう。


⑤渋谷Bunkamura ザ・ミュージアム(東京)


三井ガーデンホテルプレミア銀座からお台場方面の夜景・・・でも綺麗に撮れないんだよなぁ

 東京出張の際、ごく稀にですがいいホテルに泊まれることがあります。そんな日の夜は友達と会わずに、ホテルでゆっくりお湯に浸かって本を読むのが至極の過ごし方です。この時だけは都会も悪くないもんだと思えますね。

 さて、東京に来れば楽しみは博物館と美術館巡り!今回向かった先は・・・



撮影できないので公式より拝借

 渋谷にある文化村、ザ・ミュージアム。主に西洋中世から近世中期までの絵画を扱って展覧会をしていることが多く、この時は「風景画の誕生」展が行われていました。タイトルには全く魅かれませんが、他にめぼしいところがなかったし行ったことがないので足を運ぶことに。

 こちらのチケット売り場で、現代紙幣の芸術品こと二千円札(?)を披露すべし・・・!



窓口にいたのは50歳前後のおばさま


牧「これでお願いします」

おばさま「あらヤダ、二千円札w はい、400円のお釣りです」



 やり取りは流れるようにスムーズだったのですが、完全に珍品を笑うようなその反応。なにが「ヤダ」なんだよ。
 多少期待に添う反応をしつつも仕事の流れは一切乱さないというある種のプロの姿を見たような気がしました。
 おばさん、ありがとう。。


⑥軽井沢の蕎麦屋(長野県)



 日本を代表する避暑地、軽井沢。
 訪れる直前にブラタモリで軽井沢が特集されたおかげで、街中を歩きながら友達に街の成り立ちを解説したり、テレビに出て来た風景に大喜びしたり。




 元々日本より涼しく湿度も低い土地に住んでいたヨーロッパ人が日本国内に快適さを求めて興した街が、ここ軽井沢。なのでこうして教会があったりするのです。しかも結構数あるっぽい。
 こちらは中に入ると牧師さん?が笑顔で一緒にAmazing Graceを歌ってくれるのですが、その後説教が始まり突如激しく泣き出します。ドン引きの極みです。

 そんな牧師さんはいいとして、お昼をこちらでいただきました。




 軽井沢の繁華街の奥の方にある、蕎麦処ほのか。
 私は迷わず山菜蕎麦をご指名。なぜなら沖縄では和蕎麦も山菜も満足に食べられませんですからね!(両方大好き)



ないちゃーにはただの山菜蕎麦に見えるかもしれないけど、私にはたまらなくありがたいモノに映るのです

 お会計の時間となり、レジを見ると50歳半ばと思しき女性(A)、厨房にはヒマを持て余した60代女性が二人(BとC)。


牧「これでお願いします」

A「はい・・・うわーーー!!二千円札だぁ!!」



 あまりの反応にこちらが仰天しましたよ。そこまで驚かなくても!!
 しかもこの声を聞きつけて、B、Cが厨房から顔を出したのです。


B「うわ~、いつぶりかなぁ」

A「お姉さん、沖縄から来たの?」


牧「はい、そうです」



 沖縄人だと思われたければ二千円札を使えば無条件でそう思われるようですよ。


C「でもさ~、コレ受け取っても困るよね」

A「置き場所がないもんねぇ」

B「私これキラ~イ」

ABC「あははははっ!!」




※イメージ映像でお送りします

 このおばさま三人衆、予想を遙かに超える大盛り上がりを見せた挙げ句、最後は二千円札をディスってその場が収まるというとんだ展開に。えぇぇ~、着地点そこかい・・・。
 はるばる海を越えて長野の地まで渡ってきた二千円札も、キャッシャーの中で肩身の狭い思いをしているかもしれません。

 ともあれこれだけの反応を見ることができて、私としてはひとまず満足。
 今度はもっとこう・・・イイ反応が見たいな!


⑦天草ロザリオ館(熊本県)


 以前、衝撃の杉ようかんとの出会いをしたのが熊本は天草の地でした。当然、この時も二千円札を財布に忍ばせ名所巡りです。



天草四郎時貞・・・迷えるこの二千円札に愛の手を・・・!

 熊本市内のコンビニや観光名所ではイマイチ反応が得られなかったこともあり、天草に期待。
 そしてこのタイミングでやってきたのが天草ロザリオ館でした。



隠れキリシタンの遺物を集めた資料館

 小さく粗末な階段を登ると、隠れ部屋で隠れキリシタンが祈りを捧げる姿を覗き見できるのですが、覗き見というこのシチュエーションが非常にシュール。撮影禁止のため絵面をお届けできず、とても残念です。

 こちら受付の窓口にいたのは50歳手前と思しき女性。ニコニコと応対してくれる彼女に、銀行の金庫で隠れ紙幣化していた彼をそっと差し出します。




牧「これでお願いします」

女性「あらっ、珍しい。まだあるんですね」

牧「あるんですよ(苦笑)」



 天草の地では、すでに絶滅したことになっているのでしょうか。


女性「そうか~、懐かしいですねぇ。どこから来たんですか? (沖縄です) あ、沖縄。沖縄ではまだあるんですね。はい、お釣りです」



 そう言ってもまだ二千円札をキャッシャーに収めず眺める女性。
 一通りいい反応が見られたな~と思いその場を立ち去ろうとすると、彼女は札を恭しく持ち上げ、こんな言葉を発したのです。




女性「うん、珍しい!いいことありそう!!ありがとうございます☆彡」


 う・・・うわぁぁ・・・( 〇∇ `*)パアァ .゚*"

 この実験で何十枚と二千円札を日本国内に運び出しましたが、これだけ素敵な反応を見たのは後にも先にもこれっきりです!ここまで言ってもらえて、なんだか私まで「持ってきてよかった!」という気持ちになりました。

 この二千円札は世に祝福されて誕生したにも関わらず、人々の『不便!』という弾圧のもとに長く金庫に隠れていましたが、ついにこの隠れキリシタンの里で愛の洗礼を受けることができたのです・・・。

 私にはこの女性がとても輝いて見えました。本当です。二千円札に代わって感謝申し上げます。





 以上、絶滅危惧種二千円札を日本中で使ってみた結果でした。

 さて、今回何が失敗だったかのというと。
 何も知らない相手に向けて二千円札を渡しながらシャッターを切るなんて到底できず、考えた手段が盗撮というやや犯罪の香りに走らざるを得なかったことと、そのため絵面がイマイチ面白くない点。
 それと最大のミスは、間違いなく二千円札を見た記憶がないであろう未成年にアタックする機会を逸したことです。そもそもそんな若いコがレジにいる姿なんてほとんど見かけないし!
 「コンビニならいるんじゃない?」という助言を予めもらってはいたのですが、そんな頻繁に入らないから当たりが引けなかったんだよなぁ。。
 それに、観光地の窓口なんて基本は年輩の女性です。これは最初から偏らざるを得なかった、ということですね・・・。


こんな素晴らしい(?)使い道が開かれている二千円札。可能性、無限大!


 知人がまだ小さな内地の姪っ子にお年玉として二千円札をあげたところ、「ニセ札だぁ!」という反応が返ってきたそうです。若い世代は見たことがないどころか、ヘタすると知識にない可能性だってあるわけです。

 二千円札・・・本当に不憫なコ!!


普及を図るべき日銀那覇支店にも見放されているんですよ


 お金は万人が持つものです。いつも目にしているものであれば眺める機会なんて無いかもしれませんけど、稀なものが手元にやってきた時には、ジッと見つめることもあるでしょう。それが沖縄に思いをはせる機会にもなるってもんですよ。
 考えてみて下さい。もしあなたの手元に突如二千円札がこんにちはしたら、必ずそうなるはずです。


 今後二千円札が、

絶滅危惧種IB類(近い将来、市場から絶滅する危険性が高いもの)←イマココ

絶滅危惧種IA類(ごく近い将来における市場での絶滅の危険性が極めて高いもの)

野生絶滅 (銀行の金庫にしか存在しないもの)

絶滅(用済み)

とならないよう、沖縄スキーとして今後も積極的に銀行から二千円札を救い出し、世に羽ばたかせることをここに誓います。。
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