2016年03月05日
食べられる日は近い!? 沖縄の天然記念物”ウタイチャーン”とは?~後編~
前編の、続き。
乗りあいで南部ジャングルを抜けて・・・
今見えている土地の手前半分は大谷さんの土地だそうな
この場所までくると、やたら鶏の鳴き声とチャーンらしき声、そして犬の吠える声がひっきりなしに聞こえてきます。コケコケワンワン、コケコケワンワン。
こちらが大谷さんの養鶏場。もっと大きなのを想像していたんですが、手作り感溢れる掘っ立て小屋です。台風は大丈夫なんだろうか。
そう思ったら、沖縄お得意の廃タイヤ補強だった
養鶏場の門をくぐると、急激に鼻孔に突き刺さってくる鶏糞のかぐわしい香り・・・。
そしてついに、
いた!!
本日のメインディッシュ、ウタイチャーンとご対面です!
大谷さん「ウタイチャーンとは言っても、品種のことを指すわけではないんです。同じチャーンでも、チャーンの鳴き方というものがあって、それができるのがウタイチャーンと呼ばれるんですよ」
つまり、メスは鳴かないからウタイチャーンではないし、オスでも規定の鳴き方をするものだけが"ウタイチャーン"の称号を得ることができる、ということ。
種は同じなのに定義づけされるものは半分もいないのか!ちょっと変わっていますよね。
復習ですが、このウタイチャーンの鳴き声というのは、
"ケッケーーーーーーーー、ケッ!"
という一風変わったもの。最後の"ケッ!"がミソらしく、ここは腹式呼吸で声を出している。
ブロイラーより少し小さいので、掛け合わせで肉を多くとることが課題
牧「腹式呼吸すごいんですか。横隔膜固そうですね」
大谷さん「肉にしたら相当固くておいしくないハズよ!それと、三線の地方は飼ってる人が多いわけ。腹式呼吸の参考にしてるみたいよ(笑)」
聞けば琉球古典民謡にはチャーンに関するものが3曲もあるらしい。
今は愛好家も減り、チャーンの鳴き声を競う大会も年に1回うるま市で開催されるのみですが、昔は貴族・士族の優雅なたしなみだったんでしょうね。
大谷さん「手をだしてください」
う・・・うわぁぁぁ・・・・生きてる・・・温かみを感じる・・・。
私の目には、食べ物として映っていません。完全に、生き物という認識です。
大谷さん「これからきっと孵るはずですよ」
卵用の鶏は一日に1個卵を産みますが、チャーンは年60~70ほどしか卵を産まないらしい。家畜化されていないのも、体が小さいのに加え卵の少なさが一つの理由らしいです。
今にも食いつきそうなこの表情よ!
と思いきや、
オスもだけど、メスも持たせてもらった
意外とこれが大人しい!
鶏って、私の中では気性が荒くて気に入らなければ血が出るほど突つきまくるイメージがあったのですが、チャーンは意外と温和。結構人慣れもする生き物らしいです。
考えてみれば、このテの鶏を持ったのは小学生の頃、移動動物園のヒヨコをもらって成長させニワトリになった"ピーちゃん"以来。慣れると本当にカワイイんですよねぇ・・・鶏。
ただし、足は恐竜だ!!
大谷さん「チャーンの入手に一番時間がかかりました。最初、南部保存会にチャーンを食べたいと言ったら怒って追い返されちゃって。何度も足を運んで説得したんです。保存会からは、『チャーンとして売り出してほしくない。歌ってこそのチャーンだ!』と言われてるんです。僕はチャーンそのものを食べるわけではなく、途絶えそうなチャーンの血を『食べて歴史を残す』をコンセプトに、掛け合わせして残していきたいんですよ」
チャーンの保存会はうるま市と南部の2つがあるそうですが、南部は会長が若手で70代後半と超高齢化まっしぐらだそうで、今のままだと将来的には消えてしまいそうなほど。ここは完全に頭数管理されているヨナグニウマと異なる点ですね。
人が住む場所が都市化していくと、チャーンの鳴き声は周辺にはただの騒音。徐々に愛好家も消えていってるそうですが、保存会に飼いたいと言えば無償で提供してくれるそうですよ!イナカ住みの方、いかがでしょう!?
ちょっと鶏!大事な卵が落ちてますよ!卵はう○こじゃありません!!
これは長野から持ってきた福幸地鶏で、チャーンではありません。まずは養鶏の地盤をつくるためにこの福幸地鶏を育てているそうです。
そしてこちらは雛鶏のいる鶏舎
ヒヨヒヨヒヨヒヨヒヨヒヨピヨピヨピヨピヨヒヨヒヨヒヨ.....
大谷さん「これは福幸地鶏の雛です。ハブやマングースが襲ってくることもあって・・・ハブは食べる分だけ殺すからまだいいけど、マングースは気が済むまで殺すからやっけーなわけ。南部はマングースも多くてね」
マングースって、どこいっても嫌われものなんですね。。
雛の大きさはこれくらい。主に空を飛ぶ鳥と比べると、地面にいる鶏って足がぶっといんだなぁ
薄暗いヒナ小屋から外に出て、もう一度ウタイチャーンの様子をうかがってみます。
大量の人間を見て、鳥小屋の屋根に逃げるチャーンたち。ちょっと主役、下りてこんかい!!
大谷さん「ウタイチャーンの毛の色ですけど、碁色(ゴシキ)、黒、茶、笹色等があるんです。面白いことに色の違いでケンカするんですよ!例えば黒と碁色は仲が悪かったり」
人も肌の色でケンカしますから。。でも、理性のある人間が鶏と同レベルってのも悲しい話ですけど。
ところで、当然鳴き声がウリのチャーンです。
いつ鳴くか、いつ鳴くかと動画を回していたのですが、諦めて■(停止ボタン)を押した瞬間、盛大に鳴いてくれました。
牧「うわぁぁぁ!!!こんだけ待ったのにいぃぃ!!!」
ニラ大のスタッフも大笑い。
しょうがないので、以前DEEで紹介されていたチャーンの鳴き声を味わってください。
最後の"ケッ"の美しさでメスの心を射止めるのかもしれない。。
みなさん。なぜこの鶏が"チャーン"と呼ばれるのか想像つきますか?
チャボからきているという説もあるそうですが、ピッチピチの高校生曰く、農林高校ではチャーンと何かを掛け合わせてチャボが誕生したと習ったそうです。

チャーンとの何かしらの関係がささやかれているチャボさん
参加者が授業中に調べたところ、北京語で唄うことを”チャン”と言うそうな!チャーンは原種が中国ですが、すでに絶滅しています。そして琉球王国時代、沖縄から中国皇帝への献上品にもなっていたので、何か関係があるのかもしれないですね・・・。
鶏はバイ菌でいっぱいです。最後は手をしっかり洗って、
JAの青空教室に移動して終了。
大谷さん、ピッチピチの高校生、そしてニライ大学の皆さま大変お世話になりました!
そんなわけで、ウタイチャーンを知り、触れ合う癒しの時間が終わりました。
今回はいくら沖縄の在来種で天然記念物とはいっても、見た目はその辺にいそうな鶏なので、ちょっとヒマだった方もいたかもしれません。
ここには全部を書けませんでしたが、チャーンの存在だけでなく、保存会のこだわりや、大谷さんの情熱を生で耳にする機会は、本当に貴重なものでした。
大谷さんの目標は、ウタイチャーンと別の鶏を掛け合わせて、美味しい沖縄の地鶏を開発すること。そして大量出荷ではなく、できる範囲で、大切なブランドとして育てていきたいとのことでした。
ただし、掛け合わせはもう少し先の話になりそうな様子。
いつか大谷さんのお店やつながりのある焼き鳥屋で、情熱の結晶であるチャーン・ハイブリッドを口にできる日がくるといいですね!
最後に。
本日の授業で最もテンションが高かったのはこの方でした。
ニラ大学長、新里レオナさん。鶏に触れて大歓喜
大谷さんに質問はしまくる、卵もって撮影をせがむ、チャーンもって大喜び!
新里学長、ちょっと私と近いニオイを感じます。
また近いうちに、お世話になりますね!
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